賃貸借

家主が抱える大きな法的リスク

賃貸借のトラブルもよくあります。

銀行から、「相続対策として借り入れをしてマンションを建てて、家賃収入で食べていけばいいですよ」と勧められ、マンションを建築。

ところが、思うように賃料が入らず、中には賃料を滞納する賃借人も出てくる始末。

仲介した不動産業者に言っても、「自分で出て行かない場合には、裁判をして判決を取って頂いて、強制執行してもらうしかない」という回答。

法治国家である日本では、自力救済は禁止されています。

所有者である家主であっても、賃借人の家財道具を無理矢理放り出して出て行かせたりすれば、器物損壊や住居侵入罪に問われかねません。

弁護士に依頼して、法律的に正しい方法で立ち退かせても、その費用は当然家主の負担です。

滞納家賃は入ってこない上、裁判費用も弁護士費用も掛かるわで、家主は大赤字です。

さらに、判決を取ったとしても、これはただの紙切れです。
これに基づいて、明け渡しの強制執行をしないといけないことになります。
相手の家財道具を出したり、賃借人そのものを、法に基づいて強制的に退去させるのです。

強制執行するには裁判所の執行官という係官に現地に行ってもらう必要があるのですが、執行官の費用も家主が裁判所に納める必要があります。

そして、強制執行するには、荷物を出してもらうために人夫を雇うのが通常ですが、これについても家主が支払わないといけません。

もちろん、理論的にはこうした費用は相手に請求できます。
しかし、請求する権利があるということと、相手から現実に支払ってもらえるかは全く別のことなのです。
家賃を滞納しているような人は、大抵お金を持っていないので、滞納家賃や強制執行費用を相手から回収できることはほとんどありません。

当然ながら、家賃を滞納されている間も、銀行への返済は通常通り行う必要があります。

小さなマンションの部屋でも、こうした経費が総額で100万円くらいかかりますので、逆に立退料を支払って出て行ってもらうという馬鹿みたいな話もある訳です。

暴力団などが、借りたその日から一度も家賃を支払わず住んでいたというような話もあり、最初に貸した人と違う人物が入って、誰が住んでいるか分からないということもあります。中にいつの間にか外国人が15人くらい住んでいたとか。

気軽に物は貸せませんね。
相続税をまともに支払っていた方が安かったという場合もあり得ます…。

少々ネガティブな話になってしまいましたが、こういったリスクがあるということをご理解下さい。