相続

遺言のススメ

遺産分配でもめることなんてない…。

両親が健在の頃はそのように考えているきょうだいが多いことでしょう。

ところが、いざ両親が死亡してみると、長男は、「俺は親の面倒をみてきたし、長男だから全部俺が相続する」と言った一方で次男は、「今は長男が全部相続するというのはおかしいし、兄貴は父親の財産を生前から無断で使っていただろう」。

妹は妹で、その配偶者が出てきて、「父親の財産が残っているのは、私のところが昔もめ事を解決してあげたからで、私のところは多くもらわないと…」なんてことになったりすることは意外に多いものです。

遺産を分ける方法としては、まずは任意の協議です(遺産分割協議)。

しかし、他の全員が内容に同意していても、1人だけが反対しているような場合には、その1人の反対のためだけで遺産を分けることが出来ないようになっています。

任意の協議で協議が整わない場合には、遺産分割調停というものを家庭裁判所に出しますが、これも話合いですので、裁判所の調停委員さんが間に入ってくれるとはいえ、話し合いがどうしてもまとまらない時もあります。

そのような場合には、裁判官が、「このように分けなさい」と審判で決めてしまうことが出来ますが、これは時間がかかります。

遺産分割も弁護士の重要な業務の1つですが、費用は目的となる遺産についてその価格を3分の1として計算し(もともと貰えることが確定しているので)、これに対して費用が決まってきますので、遺産が多くても依頼される価値はあると思います。

ちなみに、3000万円貰える遺産がある人の依頼を受けた場合には、3分の1ですから1000万円が費用を計算する基準となります。

この場合の着手金標準は、5%+9万円で、34万円と消費税です。報酬は確保出来た財産に対して10%+18万円が標準の報酬。現実にこれだけ取るかは、具体的事案によって異なります。

一方、相続争いを避けるには、生前に遺言を書いておけばよいのですが、これも方式に厳格な制限がありますし、死亡後隠されてしまうこともないではないので、公証人に作成して貰う公正証書遺言としておくことをお勧めしています。

公証人の費用も通常ですと数十万円です。弁護士に依頼した場合には、公正証書遺言の案を作成するために10万円~数十万円の費用が必要ですが、公正証書遺言には証人が必要ですので、弁護士は遺言作成の証人にもなりますから経済的には後に遺産で身内が争うよりもよいと思います。

遺言では通常、執行者というものも定めておくことになっていますが、これも依頼された弁護士に依頼しておくと、遺言に従って手続してくれます。これは別途費用がかかりますが、遺産の中から支出されます。

ただし、遺言によっても、侵害出来ない権利があります。

これを遺留分といいます。

たとえば、父親が年老いてから後妻さんとの間に出来た子どもを溺愛し、先妻との間の子どもには一切渡さないというような遺言を書いていた場合、先妻さんの子どもは、少なくとも自分にはこれだけの期待権があったということで遺言にかかわらず遺留分を請求出来ます。

みなさんも、今の内に遺言を書かれておいてはどうでしょうか。